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変形労働時間制 危機的な国会審議状況

嶋崎量 弁護士の変形労働時間制に対する明快な法に基づく反対意見です。

 

教員の長時間是正に、変形労働時間制の導入は不要です ~国会参考人意見陳述を踏まえて~
 yahoo ニュースより転載

 

現在、国会で教員の「働き方改革」に関連し、給特法の改正案が審議されている。

この記事を執筆した時点では、衆議院文部科学委員会において、野党会派(立憲民主・国民・社保・無所属フォーラム、日本共産党)の反対にも関わらず、自民・公明両党と日本維新の会などの賛成多数で可決されてしまった。

 NEWS WEB 「教員の働き方改革 改正案 衆院委員会で可決」2019年11月15日 19時00分

筆者も、この法案が審議された衆議院文部科学委員会において、参考人として反対の立場で意見陳述をさせていただいたが、拙速且つ不十分な審議経過には、正直いって驚きを隠せない。

これから、衆議院本会議、参議院での審議が残されているが、このままでは法案の問題手すら明らかにならずあっさり成立してしまうのではないかと、強い危機感もある。


法案の重要部分である、一年単位の変形労働時間制導入については、私も既に下記記事を書いている。

【筆者執筆・Yahoo!ニュース個人記事】

公立学校教員への1年単位の変形労働時間制導入は社会にとっても有害無益

この法案では、政府は法案提出の前提として、以下の認識の下で法改正に着手していることは重要だ。

○ 我が国の教師の業務は長時間化しており、近年の実態は極めて深刻。

○ 持続可能な学校教育の中で教育成果を維持し、向上させるためには、教師のこれまでの働き方を見直し、子供たちに対して効果的な教育活動を行うことができるようにすることが急務。

(法律案概要より)
要するに、「教師の業務は長時間」「実態は極めて深刻」であり、教育の質を維持するため「教師のこれまでの働き方を見直」すことが「急務」であるとの認識を示しているのだ。

この点には、この法案に対して賛成・反対の立場を超えて異論はなく、ここは争点ではないのだ。

争点を見誤るべきではない
本来、国会で争点とされるべきは、その「急務」であるとの認識の下、本法案がその対策となり得るものなのかだ。

その点が国会で審議されるべきなのだが、私が把握する限り、到底その点が審議尽くされたとは思えない。

参考人への質疑でも、深刻な長時間労働の実態、教育の質を維持する工夫、抽象的な教員の働き方飲み直しなどばかりが議論されていた。

本来議論されるべきは、一年単位の変形労働時間制導入が、その対策たり得るのかであるが、そこは議論が深まっていないように思う。

先行配信した記事でも触れたが、そもそも休日まとめ取りに変形労働時間制導入など不要だ。

そもそも、休日のまとめ取りを実現したいのであれば、地方公共団体が休日まとめ取りが可能になる条例を設ければ足りる。国がそれを推奨したいのであれば、法律で、地方自治体が条例でこれを可能にすることを定めればよい。

地方公務員である教員の労働条件は、勤務条件条例主義により、基本的には条例で決められる。だから、単純に条例で「8月に連続した特別休暇を与する」と定めれば、狙いである「休日まとめ取り」は可能なのだ。

わざわざ労働基準法の一年単位の変形労働時間制を持ち出す必要がないのだ。

なお、衆議院文部科学委員会では、岐阜市教育委員会教育長の早川三根夫氏から、岐阜市における夏期休業中に16日間連続の学校閉庁日を実施してている実例が報告されている(ただし、有給休暇等の既存休暇のまとめ取りによるもののようだ)。

現行制度上でも、休日まとめ取りは可能なのは、この岐阜市の例からも明らかなのだ。

しかも、既に先行配信した記事で触れたとおり、この一年単位の変形労働時間制導入時に、対象となる教員の意見を反映する手続きでもあり重要な労基法上の要件である労使協定が除外されているという点でも大問題だ。

なお、勤務条件条例主義とはいえ、実は地方公務員についても、法令条例に抵触しない限り、職員団体と当局の書面協定の締結が認められてる(地公法55条9項)。だから、万が一にも変形労働時間制を導入するなら、せめて書面協定が必須要件となるような法整備が歯止めとしては不可欠だ。

変形労働時間制は、1日単位・1週間単位の労働時間規制の「枠」を取り払う、危険な、例外的な制度だ。

だからこそ、労働基準法には、対象者や対象の労働時間などを詳細に定めた労使協定を定めて、監督機関である所轄の労働基準監督署への届出を義務づけている。また、恒常的な長時間労働の職場では導入できないともされている。そうった、厳格な縛りもなく変形労働時間制を導入するなど、許されないことだ。

実は、変形労働時間制は、多くの職場で既に導入され、労働「時間」削減ではなく、「残業代」削減、残業代不払いの「脱法」手段として悪用されている。

ただ、給特法のある教員の場合、現在も残業代がゼロであって、残業代削減のため導入メリットはない。それなのに、あえて導入をする狙いは、繁忙期の残業時間を減らし、みせかけの残業時間を削減することにあるとしか考えられない。

その本音を隠し、見栄えの良い「休日まとめ取り」が可能となるのだというデマを流し、労基法を歪める改正を通そうとするのでは、政府の対応はあまりに無責任だ。