分析化学
Print ISSN : 0525-1931
71 巻, 9 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
総合論文
  • 香川 信之
    原稿種別: 総合論文
    2022 年 71 巻 9 号 p. 449-460
    発行日: 2022/09/05
    公開日: 2022/10/05
    ジャーナル フリー

    合成高分子は,一般的に分子量分布を有し,さらに複数のモノマーから構成される共重合体では組成分布を生じることが多く,これらの分子構造の違いを詳細に解析することは重要である.組成分布については,溶媒グラジエントHPLCのひとつである,GPEC(Gradient Polymer Elution Chromatography)が有効であり,さらにこれとサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を組み合わせた二次元液体クロマトグラフィー(2D-HPLC)は,組成分布と分子量分布を同時に評価できる,非常に優れた分析方法である.本研究では,GPECや,2D-HPLCを用いて,アクリル系高分子ブレンド試料の組成分離と各構成高分子の分子量解析,さらに,エチレン─酢酸ビニル共重合体(EVA)等の共重合体の組成分布解析を行った.その結果,2D-HPLCは,高分子の組成分布評価にとって非常に有効な手法であることが確認できた.

  • 高原 淳, 石毛 亮平, 平井 智康, 西堀 麻衣子, 檜垣 勇次, 山添 康介, 原田 慈久
    原稿種別: 総合論文
    2022 年 71 巻 9 号 p. 461-469
    発行日: 2022/09/05
    公開日: 2022/10/05
    ジャーナル フリー

    放射光は,従来の実験室用X線源によって生成される光(X線)よりもはるかに明るく,軟X線から硬X線まで広いエネルギー領域にわたる光である.X線は光子エネルギーの減少とともに元素に敏感になる.放射光の広いエネルギー領域と高輝度かつ質の高い光を用いた散乱法と分光法は,さまざまなソフトマテリアルの構造・特性解析における強力なツールとなる.本論文では,著者らがこれまでに取り組んできた放射光を利用したソフトマテリアルの構造・特性解析の一例として,1)一軸延伸中のコロイド結晶のメカノクロミック挙動と,変形下での粒子配列構造変化のその場超小角X線散乱による解析,2)テンダーX線を用いた斜入射広角X線回折による半導体ポリマー薄膜の膜厚方向の構造解析,3)X線吸収微細構造によるポリ(3-ヘキシルチオフェン)の生成機構の解析,4)高分子電解質ブラシ中の水構造の軟X線吸収及び発光分光分析について,報告する.

  • 平野 朋広, 百瀬 陽, 上池 亮太, 右手 浩一
    原稿種別: 総合論文
    2022 年 71 巻 9 号 p. 471-482
    発行日: 2022/09/05
    公開日: 2022/10/05
    ジャーナル フリー

    核磁気共鳴(NMR)分光法は高分子材料の性能に影響を与える一次構造を解析する最も有用な手段のひとつである.本報では,メタクリレート系共重合体のNMRスペクトルに多変量解析(主成分分析や部分最小二乗回帰)を適用して,定量的な一次構造解析を行った事例について述べる.メタクリル酸メチル(MMA)とメタクリル酸tert-ブチル(TBMA)とのラジカル共重合で得られる線状共重合体の13C NMRスペクトルを多変量解析することで組成と連鎖分布を解析した.TBMAとエチレングリコールジメタクリレートとの開始剤組込みラジカル共重合で得られる分岐共重合体については,開始剤断片を含む組成解析と分岐度の定量を行った.高分子反応で得られるMMA─メタクリル酸ベンジル(BnMA)共重合体については,反応条件と連鎖分布との関係について調べた.さらに,MMAとBnMAとのラジカル共重合については,1H NMRスペクトルの多変量解析で組成と連鎖分布の定量的な解析を行い,一つのサンプルからモノマー反応性比を算出した.

  • 中村 清香, 佐藤 浩昭
    原稿種別: 総合論文
    2022 年 71 巻 9 号 p. 483-493
    発行日: 2022/09/05
    公開日: 2022/10/05
    ジャーナル フリー

    質量分析法はポリマーキャラクタリゼーションにおいて有力な手法であり,測定装置の高分解能化とともにますますその利用範囲が拡大している.その一方で,マススペクトルが複雑になるため解析が困難になるという課題があった.その課題に対し,著者らはマススペクトルを二次元プロットへと展開することで視覚的に成分分布を表現する「ケンドリックマスディフェクト(KMD)解析」を,実用的なポリマー分析へと初めて適用した.さらにKMD解析を工業製品として用いられる複雑な組成を持つポリマー材料の組成分析へと適用するために,KMDプロットの高分解能化を行った.あわせて,KMD解析に適用できる高強度のマススペクトルを,マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析法(MALDI-TOFMS)で観測するための,簡便な試料前処理法を開発した.さらにKMD解析の適用範囲をMALDIのみならず,他のイオン化法を用いたデータへも拡大した.このような成果により高分解能質量分析法を用いたポリマーキャラクタリゼーションが加速されると期待される.

報文
  • 川井 忠智, 浮田 静, 島本 周
    原稿種別: 報文
    2022 年 71 巻 9 号 p. 495-500
    発行日: 2022/09/05
    公開日: 2022/10/05
    ジャーナル フリー

    セルロースアセテート(CA)を幅広い置換度(DS)に関して分離することができる,グラジエントポリマー溶出クロマトグラフィー(GPEC)法を開発した.CA試料(平均DS=0.6〜2.9)をプロピオニル化またはベンゾイル化して,セルロースアセテートプロピオネート試料及びセルロースアセテートベンゾエート試料を合成し,GPEC法を用いて置換度分別(組成分別)した.分別は,フェニル基修飾シリカカラムを固定相として,アセトニトリル: H2O=6 : 1(v/v)から酢酸エチルへの逆相吸脱着機構に基づく溶離液グラジエントを用いた.両サンプル系ともにDS値に応じて置換度分別できた.しかしいずれの系でも,DSの低い試料では,わずかな相分離の影響が観察され,また,高DSの試料で低い保持時間での鋭いピークが観察されるという問題が見られた.定量的置換度分布の決定にはさらなる分離系の検索が必要であるが,この方法は広いDS範囲でのDS分布の決定に適用できると思われる.

  • 川井 忠智, 伊藤 雄三
    原稿種別: 報文
    2022 年 71 巻 9 号 p. 501-510
    発行日: 2022/09/05
    公開日: 2022/10/05
    ジャーナル フリー

    可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)共重合体の分子量と化学組成の相関を,紫外検出器─示差屈折率検出器二重検出サイズ排除クロマトグラフィーにより解析した.ポリ(スチレン-co-アクリル酸メチル)及びポリ(スチレン-co-アクリル酸tertブチル)において,低重合率試料は,低分子量領域ほどスチレン含有度が高く高分子量領域ではスチレン含有度が低下した.一方,高重合率試料では,低分子量領域ほどスチレン含有度が低く高分子量領域ではスチレン含有度が高くなった.この重合率変化に伴うスチレン含有度の変化は,ポリ(スチレン-co-メタクリル酸メチル)では,ほとんど認められなかった.このスチレン含有度の変化は,RAFT平衡反応において鎖長依存性の存在を示唆するものである.

技術論文
  • 永尾 達彦, 八木 敦史, 神田 裕基, 川口 邦明
    原稿種別: 技術論文
    2022 年 71 巻 9 号 p. 511-516
    発行日: 2022/09/05
    公開日: 2022/10/05
    ジャーナル フリー

    ポリオキシメチレン(POM)は代表的な結晶性のエンジニアリングプラスチックであり,耐燃料性などに優れることから,自動車燃料系システム部品に多く利用されている.このような用途では燃料とPOMが直接接触することで,POMがわずかに燃料を吸収して膨潤し力学特性が変化することが知られている.力学特性の変化としては環境温度の影響が従来から知られており,これらの要因についてPOMの分子運動性や高次構造に与える影響を調べることは,製品設計においても重要であると考えられる.本研究では,加熱下および燃料膨潤下におけるPOMの分子運動性および高次構造変化について,固体NMRおよび広角X線回折(WAXD),小角X線散乱(SAXS)を用いて解析を行った.固体NMR測定の結果,加熱下では結晶相から非晶相までを含む全ての領域の分子運動性が向上した一方で,燃料膨潤下では非晶相および中間相のみの選択的な分子運動性の向上が認められた.また,固体NMR,WAXDおよびSAXS測定の結果から,燃料膨潤下では結晶化度の増加と膨潤による非晶部の体積増加の変化が同時に生じていることが確認された.

ノート
  • 石塚 圭, 柿内 俊文
    原稿種別: ノート
    2022 年 71 巻 9 号 p. 517-522
    発行日: 2022/09/05
    公開日: 2022/10/05
    ジャーナル フリー

    酸無水物モノマーはα-オレフィンを有するモノマーと共重合することにより,ポリマー中の架橋点として機能するなど,重要な役割を果たす.酸無水物系ポリマーにおける機能発現メカニズムの解明には,酸無水物骨格の特定が重要となる.熱分解GC/MS法はポリマーを構成するモノマー種の特定に適した手法であるが,酸無水物モノマーは熱分解によりCO2としてフラグメント化するため,その構造情報を読み解くことが困難であった.本研究では,無水マレイン酸共重合体試料3種において,酸無水物骨格を保持した構造情報の取得を目的に,一級アミンによる誘導体化の前処理を検討した.アニリンを用いたイミド誘導体化と熱分解GC/MS法を組み合わせることで,N-フェニルマレイミドの熱分解フラグメントとして無水マレイン酸モノマーの骨格情報を取得することに成功した.また共重合モノマーを含む熱分解フラグメントも検出されることを確認した.本報のイミド誘導体化─熱分解GC/MS法により,酸無水物系ポリマーの判別分析が可能になると期待される.

  • 大城 てつや, 青柳 佑希, 山田 絵里加, 大石 不二夫, 西本 右子
    原稿種別: ノート
    2022 年 71 巻 9 号 p. 523-527
    発行日: 2022/09/05
    公開日: 2022/10/05
    ジャーナル フリー

    セルロイドの耐候性の基礎研究として,キセノンランプ照射及び紫外線照射を行ったセルロイドシートの,TG測定及びATR法によるFT-IR測定を行い,結果を酢酸セルロースシートと比較した.セルロイドでは熱分解開始温度の低下が,酢酸セルロースでは上昇が観測された.熱分解開始温度及び表面のIRスペクトルから試料表面の劣化が,DTGのピーク温度から試料内部の劣化の情報が得られた.結果を保管されていた実試料に応用した.各セルロイド実試料は主に光によって劣化し,その程度は厚さ0.2 mmのシートに8時間キセノンランプ照射した際の変化と同程度と考えられた.測定条件を工夫することでTG/DTA測定も,セルロイド試料に関しても有効な測定手法であることが確認できた.

feedback
Top